メンタルヘルス対応とは?企業側の対応について弁護士が解説!

メンタルヘルス対応とは?企業側の対応について弁護士が解説!

1 企業におけるメンタルヘルス対応について

「当社の従業員で、メンタルヘルス不調の疑いがある従業員がいます。」
「出勤しても全く十分な仕事ができていない状態が続いています。」
「さすがに最近の状況は目に余るものがありますので、解雇も含めて検討しています。」

このような相談に対して会社としてはどのように対応するべきでしょうか。

 

2 メンタルヘルス対応に関するリスク

 従業員のメンタルヘルス問題は、従業員個人の問題にとどまらず、企業にとっての重大な労務問題となっています。うつ病などの精神障害で休職を要する社員をいつ、どのような業務に復職させるか、あるいは解雇とするかの判断は容易ではありません。判断を誤ったために従業員から解雇無効の主張をされるなどの問題が深刻化するケースが相次いでいます。

 メンタルヘルス不調の原因が、長時間残業やセクハラ、パワハラなどの業務上の心理的負荷(ストレス)が原因になっている場合には、業務に起因して精神障害を発症したとして労災認定がなされる可能性があります。精神障害を発症した社員が自殺を図ったような場合には、企業は甚大な賠償責任を負うばかりではなく、行政上、刑事上の制裁を受けることや、社会的にも厳しい非難が向けられる可能性があります。そのため、メンタルヘルス不調社員への対応次第では、企業が損害賠償責任を問われるおそれがあります。

 労働契約法第15条では、会社の従業員に対する安全配慮義務が規定されています。会社が安全配慮義務を怠った場合には、民法上の不法行為責任、使用者責任もしくは債務不履行責任により、従業員に対して損害賠償責任を負う可能性があり、これまでの裁判例でも、会社に多額の損害賠償を命じた事案がみられます。

 

3 メンタルヘルス問題に対する対応

(1) 休職制度

 休職とは、労働者を就労させることができない、または、不適当な場合が生じた場合に、使用者が労働契約を維持したまま労務を免除ないし禁止することをいいます。

 休職には、法律上の定めはなく、どのような場合に休職とするかは、それぞれの会社の就業規則によって定められます。(なお、休職は、業務命令による自宅待機命令や懲戒処分としての出勤停止とは異なります。)

 メンタルヘルス不調の従業員に、休職制度により、治療に専念してもらうことができます。

(2) 診断書の提出

 休職の要否、復職の可否を判断するには、医師の診断書に基づいて判断する必要があります。従業員が診断書提出を拒否する場合に備えて、就業規則に休職にあたっては診断書の提出を義務付ける旨を記載することができます。また、就業規則には、従業員が受診する医療機関を指定する場合がある旨を記載することも可能です。

 復職に際しても、復職が可能かについて診断書の提出を求めることが重要となります。会社で定める休職・復職の基準や診断書への具体的記載事項(例えば、休業を要する期間、再発を防止するための注意点など)を医療機関への「依頼書」として、担当医師に記載してもらうように伝えると良いと思います。

(3) 復職までの手続

 メンタルヘルス不調を理由に長期の休職をしていた従業員が復職する際には、いわゆる「リハビリ出勤」を認めることで、復帰の可否をリハビリ出勤中の状況に基づいて判断したり、スムーズな復帰を図ることが可能になります。

 「リハビリ出勤」を行うにあたっては、その内容、期間や給与の有無について事前に書面で明確にしておく必要があります。

(4) メンタルヘルス不調を起こさせない対策

 労働安全衛生法の改正により、メンタルヘルス対策の強化がなされています。

 具体的には、客観的な方法により従業員の労働時間を把握すること、長時間労働者への医師による面接指導、産業医・産業保健機能の強化、産業医等の業務の内容等の周知、労働者の心身の状態に関する情報の適切な管理等によって、メンタルヘルス不調に対する未然防止が図られます。

 パワハラ・セクハラ問題は深刻なメンタルヘルス問題になっています。加害者側の従業員に自覚がないことも多いセクハラ・パワハラですが、企業側も法的、経営的、そして社会的なリスクの大きさを認識し、ハラスメント対策を強化することが必須といえます。

 

4 弁護士に依頼するメリット

 メンタルヘルス不調の疑いのある従業員に対して、仕事を継続させて症状を悪化させたり、逆に、安易に解雇してしまうと、損害賠償請求訴訟や解雇無効確認訴訟を提起される危険性があります。このようなリスクを抑えるためには、できる限り早期の対応が不可欠です。具体的事案でどのような対応が紛争を防ぎ、紛争化しても企業に有利になるかは、それぞれの事案によって様々です。そのため、関連法規や裁判例に通じた弁護士からアドバイスを受けるのがよいと思います。

Last Updated on 5月 24, 2024 by kigyo-kumatalaw

この記事の執筆者:熊田佳弘

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