1 介護業・福祉業の特徴について
「利用者が、介護サービスの利用料を支払ってくれない。」
「利用者から従業員の対応についてクレームを受けている。」
「利用者が転倒・転落して負傷した結果、高額な損害賠償を請求されている。」
「従業員との間の雇用契約書を作成したい。」
「事業所と従業員とのトラブルに発展した。」
このような相談が多く寄せられます。
2 介護業・福祉業において発生しやすい法的トラブル
介護業・福祉業においては以下のようなトラブルが多く発生しています。
(1) 利用料の未払問題
(2) 介護事故の発生
(3) 利用者からのカスタマーハラスメント
(4) 従業員との労働トラブル
3 介護業・福祉業特有の法的問題に関して弁護士ができること
(1) 利用者との利用契約締結
介護サービスを提供するに際して、必ず利用契約書を締結し、重要事項説明書の内容を説明していると思います。
これは、事業所が利用者に対して、どのように提供し、どのような義務を有するかを決める重要な法律行為で、本来、非常に慎重に行うべきです。
しかし、実際には、簡易に済ませるため、他の事業所から入手したり、インターネット上で公開されているひな形を使い続けている事業所も多くみられます。
このようなひな形は、必ずしも各事業所の実態に合っているとは限りません。事業所に重い義務を課してるひな形もあり、利用し続けると、問題が発生した場合に対応が難しくなります。また,最近は悪質クレーマー対策として契約書の文言を修正する必要性も高まっています。
弁護士が契約書を作成することにより、それぞれの事業所に最適な契約書を作成し、トラブルを未然に防ぐ可能性が高まります。
(2) 利用料の未払への対応
利用料は、介護サービスを提供するために必要不可欠なものです。その大部分は、介護保険から支払われるものの、滞納が続いた場合に、どのように利用者に請求していくかなど、難しい問題が生じます。中には、ご家族が利用者本人の年金を使い込んでいて、利用料が支払えなくなっているなど、深刻なケースもあり得ます。
居宅系事業所であれば滞納が発覚した時点で、契約の解消等により滞納額が肥大化することを避けることができますが、施設系事業所であれば、転居先が見つかるまで、滞納をしている利用者を追い出すことは難しく、滞納額が積み重なってしまう傾向があります。実際に100万円に近い金額の滞納があるというケースも多いです。
そのような場合、弁護士が通知を行うことにより利用者が支払いに応じることもあります。
また、利用者の状況、未払金額などを考慮し、訴訟などの法的手続をとることもできます。
弁護士が介入することにより、利用料を少しでも回収できる可能性が高まります。
(3) 介護事故への対応
介護事故は、事業所の全てが等しくそのリスクを有しています。どれだけ気を付けていたとしても、日常生活に介助を必要とする利用者に対してサービスを提供する以上、どうしても事故のリスクから逃れることはできません。
誤って転倒するなどの事故が発生した場合、事故の責任や損害賠償について争いが生じることがあります。そのような場合、弁護士が介入することにより、責任の所在や賠償額について反論することができ、妥当な解決に導くことが可能になります。
(4) 利用者からのカスタマーハラスメント
近年、利用者やその家族から、特別待遇を求めたり、無理難題や言いがかりをつけるような激しいクレームや、職員に対するセクシャルハラスメント、暴力、暴言などに悩む事業所が増えています。
介護事業所としても、その要望を無視できず、どのように対応するべきか、困っている事業所も多いと思います。
そのような事態を放置すると、職員は心身ともに疲弊し、離職の他、職員から安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を受けるリスクも高まります。
そのような場合でも、初期対応から弁護士が介入することにより適切な解決が望めます。
(5) 従業員との契約書作成
介護施設には、雇用契約の形態がさまざまな従業員が存在します。そのため、その契約形態ごとに、実態を反映した雇用契約書を作成する必要があります。弁護士が従業員との雇用契約書の作成から関与し、従業員との間の様々なトラブルを予防します。
(6) 従業員との労働トラブル
介護事業所からの相談で一番多いのは、実は従業員との労働トラブルです。
注意指導をしても聞く耳を持たず、問題行動を繰り返すモンスター社員への対応や、自主退職したはずの職員からの不当解雇の主張、残業代請求への対応など、職員との労働トラブルは多岐に渡り、かつ、その際に職員から請求される額は多額に及ぶことがほとんどです。
近年は、インターネットにより情報を容易に得ることができるため、職員の権利意識は非常に高まっています。職員からの訴えを無視して、対応を後回しにしているうちに、弁護士から通知が届く、ということは珍しくありません。
このような従業員とのトラブルについても、初期対応から弁護士が介入することにより、懲戒処分、退職勧奨、解雇等の適切な解決に導くことが可能になります。
(7) 未払残業代請求への対応
従業員から残業代請求を受けてしまった場合、弁護士にその対応をご依頼いただくことにより代理人として交渉をいたします。弁護士が代理人となることにより、従業員からの残業代請求について適切な解決が可能になります。
4 弁護士に依頼するメリット
介護業・福祉業において様々な法的問題が発生しており、完全に避けることはできないと思われます。
専門家である弁護士に依頼することで、早期に方針を立てたり、交渉を開始することで、問題が大きくなることを未然に防ぐことができます。また、適切な解決が可能になります。
Last Updated on 5月 24, 2024 by kigyo-kumatalaw
この記事の執筆者:熊田佳弘 私たちを取り巻く環境は日々変化を続けており、様々な法的リスクがあります。トラブルの主な原因となる人と人の関係は多種多様で、どれ一つ同じものはなく、同じ解決はできません。当事務所では、まず、依頼者の皆様を温かくお迎えして、客観的事実や心情をお聞きし、紛争の本質を理解するのが最適な解決につながると考えています。どんなに困難な事件でも必ず解決して明るい未来を築くことができると確信し、依頼者の皆様に最大の利益を獲得して頂くことを目標としています。企業がかかえる問題から、個人に関する問題まで、広く対応しています。早い段階で弁護士に相談することはとても重要なことだと考えています。お気軽にご相談にお越しください。 |