
1モンスター社員とは?その特徴と種類を解説
(1)モンスター社員の特徴と種類
企業の人事労務管理において、いわゆる「モンスター社員」への対応は大きな課題となります。
モンスター社員とは、組織の秩序を乱し、業務の効率や職場環境に悪影響を及ぼす社員です。以下、その主な特徴と種類について説明します。
(a)モンスター社員の特徴
モンスター社員には以下のような共通点があります。
①自己中心的な言動をする。
組織のルールや同僚の意見を顧みず、自らの利益を最優先する。
②過剰な権利意識
労働法規をもとに自らの権利ばかりを主張するが、義務を果たそうとしない。
③職場の秩序を乱す行動をする。
同僚や上司に対するパワハラ・モラハラ、執拗なクレームなどを繰り返す。
④業務遂行能力の欠如
指示に従わない、協調性がない、責任転嫁するなど業務に支障をきたす。
(b)モンスター社員の種類
モンスター社員は以下のように分類できます。
①ハラスメント加害型
上司や同僚に対しパワハラ・セクハラを行い、職場環境を悪化させる。
②権利主張型
労働基準法や就業規則を過剰に利用し、会社の指示に従わず業務遂行を拒む。
③無責任・怠慢型
指示された業務を遂行せず、責任転嫁を繰り返す。
④クレーマー型
会社や同僚に対し過剰な要求を行い、トラブルを頻発させる。
モンスター社員への対応には、法的知識に基づいた適切な対策と組織的な対応が不可欠です。
2モンスター社員を野放しにするリスク
企業がモンスター社員を適切に対処せず放置すると、組織全体に深刻な悪影響を及ぼします。以下、その主なリスクについて説明します。
(1)企業イメージの低下
モンスター社員など社内の問題が外部に漏れると、「管理がずさんな企業」としての悪評が広まり、採用活動や取引先との関係にも悪影響を及ぼします。特に、労働問題として訴訟に発展すれば、企業イメージに大きなダメージを与える可能性があります。
(2)生産性の低下
モンスター社員の言動によってチームの協調性が乱れ、業務効率が低下します。また、彼らの怠慢や不適切な行動により、他の社員が余計な業務負担を強いられ、全体の生産性に悪影響を与えます。
(3)職場環境の悪化
モンスター社員が職場で横暴な言動を続けると、他の社員の士気が低下し、健全な労働環境が損なわれます。特に、パワハラやモラハラを行うタイプの社員を放置すると、被害を受けた社員のメンタルヘルスが悪化し、休職や退職につながる恐れがあります。
(4)他の社員の離職リスク
優秀な社員ほど健全な職場環境を求めるため、モンスター社員が放置された職場では、まじめに働く社員が不満を募らせ、離職する可能性が高まります。結果として、企業にとって貴重な人材の流出を招きます。
3モンスター社員への対応を放置した場合に発生する法的リスク
モンスター社員を適切に対処せず放置すると、企業は様々な法的リスクに直面します。
以下、その主なリスクを説明します。
(1)ハラスメント問題による企業責任
モンスター社員がパワハラやセクハラを行い、それを会社が放置した場合、被害者から損害賠償請求を受ける可能性があります。労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づき、企業にはハラスメント防止措置を講じる義務があるため、適切な対応を怠れば企業も責任を問われます。
(2)労働災害(メンタルヘルス不調)の発生
モンスター社員の言動によって他の社員がメンタルヘルス不調をきたし、うつ病などで休職・退職した場合、労災認定を受ける可能性があります。厚生労働省の基準に照らし、職場環境の悪化が原因と認められれば、企業は安全配慮義務違反を問われ、損害賠償請求を受けるリスクが高まります。
(3)労働紛争の増加
モンスター社員が権利ばかりを主張し、業務命令を拒否したり、不当な要求を繰り返すケースでは、懲戒処分や解雇が必要となります。しかし、手続きを誤ると、不当解雇や懲戒権の濫用として労働審判や訴訟に発展し、企業側が敗訴するリスクがあります。
(4)職場秩序の崩壊による取引先や顧客とのトラブル
モンスター社員が取引先や顧客に対して問題行動を起こした場合、企業の管理責任が問われる可能性があります。信用を失い、契約解除や損害賠償請求を受けるケースも考えられます。
(5)労働基準監督署の是正勧告や行政処分
モンスター社員に対する適切な労務管理ができていないと、他の社員から労基署へ申告され、是正勧告を受ける可能性があります。場合によっては、労働基準法違反により企業が行政処分を受けるリスクもあります。
4モンスター社員への正しい対応方法
モンスター社員への対応を誤ると、職場環境の悪化や法的リスクにつながるため、適切な対処が不可欠です。以下、正しい対応方法を説明します。
(1)事実確認と証拠の確保
まず、モンスター社員の問題行動について具体的な事実を確認し、証拠を確保することが重要です。
関係者からのヒアリング、業務記録、メールのやり取り、監視カメラの映像などを収集し、客観的な証拠を整理します。
(2)本人からのヒアリング
必ず本人からヒアリングをして、事実関係を確認する必要があります。本人に対して弁明の機会を与えることが必要です。
(3)適切な指導・注意
問題行動が確認された場合、まずは注意・指導を行う。口頭での指導だけでなく、書面による注意(始末書や指導書)を行い、記録を残すことが重要です。指導内容は具体的に示し、改善の期限を明確にします。
(4)就業規則に基づく対応
モンスター社員の問題行動が改善されない場合、就業規則に基づき、段階的な措置を講じる必要があります。譴責、減給、出勤停止、降格、配置転換、最終的には解雇といった懲戒処分を適切に検討します。処分の際は、手続きを厳格に行い、労働基準法や労働契約法に抵触しないよう注意が必要です。
(5)配置転換
モンスター社員を被害者から距離をおくため、配置転換を検討することもあります。
(6)職場環境の整備
モンスター社員がハラスメント加害者の場合、被害者の保護を最優先し、社内相談窓口の設置や研修の実施を行う必要があります。また、他の社員の士気低下を防ぐため、問題社員への対応方針を明確にし、適切な職場環境を維持します。
(7)弁護士への相談
対応が難しい場合、弁護士に相談することで、法的リスクを回避しながら適切な措置を講じることができます。特に解雇を検討する場合は、労働審判や訴訟リスクを考慮し、慎重に進める必要があります。
5弁護士に問題社員対応を任せるべき理由
企業が問題社員への対応を誤ると、労働紛争や訴訟に発展し、企業にとって大きなリスクとなります。そのため、弁護士に依頼することが有効です。以下、その主な理由を説明します。
(1)法的リスクの回避
問題社員への対応は、労働基準法、労働契約法、労働組合法、パワハラ防止法などの法令に関わるため、法的知識が不可欠です。誤った対応を行うと、不当解雇や懲戒権の濫用とみなされ、企業側が敗訴する可能性があります。弁護士に相談することで、法的リスクを回避しながら適切な手続きを進めることができます。
(2)証拠収集と適切な手続きの指導
問題社員への対応では、懲戒処分や解雇を行う場合、客観的な証拠の確保が不可欠です。弁護士は、証拠の収集方法や記録の残し方を指導し、法的に有効な証拠を揃えることで、企業が適正な判断を下せるよう支援します。
(3)労働審判・訴訟対応の準備
問題社員が解雇や懲戒処分に異議を申し立てた場合、労働審判や訴訟に発展する可能性があります。弁護士が関与することで、適切な証拠をもとに企業側の主張を整理し、訴訟リスクを最小限に抑えることができます。
(4)交渉の代行と円満解決
問題社員との直接交渉は、感情的な対立を招くリスクがあります。弁護士が代理人として交渉を行うことで、冷静かつ客観的に対応し、円満な解決へと導くことができます。特に、退職勧奨や和解交渉では、法的知識をもとに適切な条件を提示し、トラブルを防ぐことが可能です。

Last Updated on 4月 25, 2025 by kigyo-kumatalaw
この記事の執筆者:熊田佳弘 私たちを取り巻く環境は日々変化を続けており、様々な法的リスクがあります。トラブルの主な原因となる人と人の関係は多種多様で、どれ一つ同じものはなく、同じ解決はできません。当事務所では、まず、依頼者の皆様を温かくお迎えして、客観的事実や心情をお聞きし、紛争の本質を理解するのが最適な解決につながると考えています。どんなに困難な事件でも必ず解決して明るい未来を築くことができると確信し、依頼者の皆様に最大の利益を獲得して頂くことを目標としています。企業がかかえる問題から、個人に関する問題まで、広く対応しています。早い段階で弁護士に相談することはとても重要なことだと考えています。お気軽にご相談にお越しください。 |