債権回収とは?企業法務に精通した弁護士が解説

債権回収とは?企業法務に精通した弁護士が解説

1 債権回収について

「取引先からの入金が滞っていて支払に困っている」
「執拗に働きかけをしても債権の支払に応じてもらえない」
「債務者へのアプローチ方法がわからずに、話し合いにすら応じてもらえない」

 債権回収は、債権者が頭を悩ませる典型的な問題の一つです。企業活動においては、売掛金の未回収や取引先の入金遅れといったトラブルが日常的に発生しており、直接訪問しても支払に応じてもらえなかったり、話し合いにすら応じてもらえなかったりと、回収が困難なケースは多く存在します。

 債権回収が困難なケースとは大きく以下の3つです。

① 債務者の支払能力が欠如している場合
② 債務者に悪意があって、意図的に支払われない場合
③ 契約書がない、取引の契約内容に争いがあるなどの理由で支払がなされない場合

 

2 債権回収について放置するリスク

(1) 債権の回収は、債務者がなかなか支払に応じてくれなかったり、話し合いにすら応じてくれなかったり、相手方の資力の問題もかかわってくるので、非常に難しい問題です。

 回収ができない期間が長くなると、逆に債権者の財政状況が圧迫され、経営リスクを背負ってしまうことになります。

 また、債権の回収期間には時効があり、支払が受けられなくなるというリスクがあります。

(2) 債権の消滅時効の改正について 

 債権の消滅時効について、平成29年民法改正により、大きな変更がなされました。

 改正前民法では、原則として「権利を行使することができる時から10年」で消滅時効が完成することとされていました。さらに、職業別の短期消滅時効制度や、商行為(取引)による債権については、消滅時効期間が「5年」と定められていました。

 しかし、民法改正により、職業別の短期消滅時効制度や商行為による債権の時効消滅制度は廃止されました。

 改正民法下では、取引の売掛金債権について言えば、通常は支払期限が到来した場合に債権者はそのことを知っているので、原則的な時効期間は債務の支払日の翌日から5年となります。

 ※ 上記の変更は、改正民法の施行日(令和2年4月1日)以降に生じた債権に適用され、同日前に生じた債権については改正前の民法の規定が適用されます。

 

3 弁護士による債権回収対応

(1) 債権者がどうしても請求に応じない場合には、まず、書面で請求をし、それでも応じない場合には、訴訟提起するのが一般的です。

 もっとも、ケースによっては、訴訟提起前に仮差押え等の制度を利用し、債務者の財産処分を事前に防いでおくことも検討します。

 また、時効が迫っている場合は、内容証明郵便の送付により、時効の完成を猶予する手続を採ります(催告による時効の完成猶予)。

 時効の完成猶予をしておくことで、6か月を経過するまで時効が完成しないので、訴訟提起の準備を行う時間を確保することができます。

(2) 実際に請求をする場合には以下の方法が考えられます。

ア 支払を催促する

 債権者の要求にどうしても応じてこない場合には、弁護士が代理となって支払を催促します。弁護士が交渉にあたることで、相手方の対応が代わり交渉がスムーズに進む可能性もあります。

 

イ 弁護士名で内容証明郵便を送る

 これも上記同様、弁護士名で催促をすることにより、相手方が支払に応じる可能性を高めることができます。内容証明郵便には、「期限内に支払わなければ法的処置を講じる」ことを明記いたします。

 

ウ 民事調停手続

 民事調停は裁判所を利用して、話し合いで相手方に支払を求める制度です。

 裁判所を介することで、当事者同士だけで交渉するよりも円滑な話し合いが期待できます。もっとも、あくまでも話し合いによる解決であり、強制力はないので、相手方が出頭しなかったり不当な引き伸ばしをしてきたりすると意味がなくなってしまいます。

 

エ 支払督促手続

 支払督促を裁判所から相手方に送付してもらい、相手方から異議申立がなければ、判決と同様に、相手方の支払義務が確定します。

 しかし、相手方が異議を申し立てた場合には、効力がなくなります。支払督促は、相手方の住所地の簡易裁判所書記官に申し立てる必要があり、相手方の住所が判明していない時には利用できません。

 

オ 少額訴訟手続

 60万円以下の金銭の支払を請求する訴訟を提起する際に求めることができる特別な訴訟手続で、原則として審理を1回のみで終わらせ判決を行う手続です。少額訴訟も、相手方が応じず、通常訴訟への移行を求めた場合には、通常訴訟へ移行されてしまいます。権利関係に争いがある場合には不向きな制度です。

 

カ 訴訟手続(通常訴訟手続)

 民事訴訟を提起し、公的に債権を確定する方法です。裁判上の和解がまとまらない場合には和解交渉を打ち切り、判決をもらうことができます。

 相手方の住所が判明しない場合、公示送達により判決をもらうことができます。

 訴訟の判決に相手方が応じない場合でも、強制執行の手続の前提として先に判決を取得しておくことが重要です。

 

キ 強制執行手続

 確定判決、和解調書、調停調書などは「債務名義」と呼ばれ、相手方が任意の支払に応じない場合、裁判所に強制執行を求めることができます。

 強制執行には、大きく分けて ①不動産執行、②動産執行、③債権執行の3種類があります。

 債権執行の中心は銀行預金の差し押さえとなります。銀行預金を差し押さえれば、回収すべき金額の範囲内である限り、差押時の預金残高をそのまま回収することができます。また、相手方の売掛金債権を差し押さえて回収することもあります。

 不動産執行の場合、対象不動産に抵当権などの担保がついているときは要注意です。対象不動産に担保力がないときは、強制執行は困難だからです。

 強制執行手続は債権回収における最後の手段として非常に有効です。

 最初から弁護士に相談しておけば、強制執行まで含めた債権回収のトータルサポートが可能です。

 

4 債権回収について弁護士に依頼するメリット

 当事務所では、債務者の財務状況を可能な限り調査した上で、債権回収の可能性やとるべき手段についてアドバイスいたします。

 また、債権の回収が困難になってしまう前に、そうならないための工夫として、抵当権、質権、譲渡担保などの担保を取っておく、保証人を立ててもらうなどの対策も考えられます。

 さらに、債権回収トラブルを起こさないように契約書を作成する等、日常的にトラブル予防を行うことも重要です。

 具体的な場面でどのような対策を講じるべきかについては、債権回収の問題に精通した弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

 弁護士に依頼をしていただくことで、面倒な債務者との交渉や内容証明郵便などの書面の作成を代理で行うことが可能です。債権回収の可否判断や催促のポイントなど、法律の実務家でなければ判断が難しい領域もあります。

Last Updated on 5月 24, 2024 by kigyo-kumatalaw

この記事の執筆者:熊田佳弘

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