解雇予告書・解雇通知書とは?記載すべき内容や通知方法について弁護士が解説

解雇予告書・解雇通知書とは何か

(1) 解雇予告書の定義と役割

解雇予告書とは、使用者が労働者を解雇する際に、労働基準法第20条に基づき事前に通知する文書です。

解雇の理由、解雇日、予告手当の有無などを明記し、労働者に対し30日前までに交付することが求められます。

これは労働者の生活保障と適正な解雇手続きを確保するためのものであり、不当解雇の防止にも寄与します。即時解雇の場合は、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。

(2) 解雇通知書の定義と役割

解雇通知書とは、使用者が労働者に対し、正式に解雇を通知する文書です。

解雇の理由、解雇日、退職手続きに関する事項などが記載され、口頭ではなく書面で明示することで、トラブルを防ぎ、労働者の権利を保障する役割を持ちます。

解雇予告書と異なり、すでに決定した解雇を正式に通知するものとして扱われます。

特に解雇理由証明書の請求があった場合には、使用者は速やかに交付する義務があります。

(3) 解雇予告書と解雇通知の違い

 解雇予告書は、使用者が労働者に対し、解雇を30日前までに予告するための文書であり、労働基準法第20条に基づきます。

これにより労働者の生活保障を図り、即時解雇の場合は解雇予告手当の支払いが必要となります。

一方、解雇通知書は、解雇の決定を正式に通知する文書であり、解雇理由や退職手続きの詳細を記載します。

解雇予告は法的義務ですが、解雇通知は明確なルールはないものの、後のトラブル防止に有効です。

解雇予告書・解雇通知書に記載すべき必須事項

(1) 会社名・従業員名などの基本情報

会社名・従業員名などを正確に記載します。

(2) 解雇理由

解雇の合理的な理由を具体的に記載し、労働者に納得を得られるようにします。

(3) 解雇日

労働者がいつ解雇されるのか、具体的な日付を明示する。

(4) 解雇予告手当の金額

30日未満の解雇予告期間の場合は、解雇予告手当の金額を記載します。

これらを記載することにより、労働者の権利を守り、トラブルの防止につながります。

解雇理由の妥当性と不当解雇

(1) 正当な解雇理由とは

解雇は労働者の生活に大きな影響を与えるため、労働契約法および判例に基づき、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。正当な解雇理由には以下のようなものがあります。

  a  勤務成績や能力の著しい欠如

業務遂行能力が著しく不足し、指導や教育を行っても改善が見られない場合。

 b 勤務態度の重大な問題

度重なる遅刻や欠勤、職場秩序を乱す行為など、業務運営に悪影響を及ぼす場合。

 c  重大な服務規律違反や不正行為

横領、ハラスメント、機密情報漏洩など、企業の信頼を損なう行為を行った場合。

 d  労働契約の根本的な違反

虚偽の経歴申告や、副業禁止規定の違反など、契約の前提が崩れる場合。

 e  経営上の必要性(整理解雇)

会社の経営悪化により人員削減が不可避であり、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③対象者の選定基準の合理性、④手続きの適正性が満たされる場合。

正当な解雇理由がない場合、解雇は無効と判断される可能性があるため、慎重な対応が求められます。

(2) 不当解雇にあたるケース

 a 懲戒解雇の有効性

懲戒解雇は、企業秩序を著しく乱す重大な非行に対して科される最も重い処分であり、その有効性が認められるには厳格な要件を満たす必要があります。

具体的には、

 ①就業規則に懲戒解雇事由が明確に規定されていること

 ②労働者の行為がその事由に該当し、社会通念上相当と認められること、

 ③手続きが適正に行われたこと

が必要です。

これらを要件を満たさない場合、懲戒解雇は無効とされ、解雇無効や損害賠償請求を受ける可能性があるため慎重な判断が必要です。

懲戒解雇が不当解雇にあたるケースには次のようなものがあります。

 ① 就業規則に懲戒解雇事由が明記されていない場合

懲戒解雇は、労働者に対する極めて重大な制裁であるため、就業規則に懲戒解雇の具体的な事由が明記されていなければ無効とされます。

 ② 解雇が社会通念上重すぎる場合

軽微なミスや単なる勤務態度の悪さを理由に懲戒解雇とする場合、処分が重すぎると判断され、不当解雇とみなされることがあります。

 ③ 弁明の機会など、適正な手続きを経ていない場合

労働者に弁明の機会を与えず、一方的に懲戒解雇を行った場合、不当解雇とされる可能性があります。

就業規則に規定された懲戒手続きを遵守していない場合も無効とされることがある。

 ④ 差別的・報復的な解雇の場合

労働組合活動や内部告発を理由にした懲戒解雇は、違法な不当解雇と判断されます。

以上の要件を満たさない場合、懲戒解雇は無効とされ、労働者は地位確認や賃金支払いを請求できるため、企業としては慎重な対応が必要です。

 b 整理解雇の4要件

 整理解雇の4要件との関係で不当解雇にあたる場合

整理解雇は、会社の経営上の必要性に基づく解雇ですが、判例上、以下の4要件を満たさない場合は不当解雇と判断される可能性が高くなります。

 ① 人員削減の必要性がない場合

会社が赤字でなく、経営改善の努力を十分に行っていないにもかかわらず解雇を実施した場合、不当解雇となる可能性があります。特に、一時的な業績悪化や単なる利益追求を理由に整理解雇を行うと、裁判で無効とされるリスクが高くなります。

 ② 解雇回避努力義務を尽くしていない場合

希望退職の募集、配置転換、賃金カットなどの代替措置を講じずに解雇を強行した場合、不当解雇とされる可能性があります。特に、新規採用を継続しながら整理解雇を行う場合、回避努力が不十分とみなされるリスクがあります。

 ③ 解雇対象者の選定基準が不合理な場合

解雇対象者の選定が恣意的で、客観的・合理的な基準に基づいていない場合、不当解雇と判断されます。例えば、業績不振を理由にしながら、実際は特定の労働組合員や特定の年齢層だけを対象にする場合、差別的解雇とみなされることがあります。

 ④ 説明・協議などの解雇手続きが不適切な場合

労働者や労働組合と十分な協議を行わず、一方的に解雇を通知した場合、不当解雇とされる可能性が高くなります。特に、解雇の理由や必要性を十分に説明しない場合、裁判で解雇無効と判断されることがあるります。

以上のいずれかに違反した場合、整理解雇は不当解雇とされ、無効となる可能性があるため、慎重な対応が求められます。

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解雇予告書・解雇通知書の正しい交付方法

解雇予告書・解雇通知書は、労働者に対して解雇を通知するための重要な文書であり、その交付方法にも慎重を期す必要があります。

適切な交付方法を選ばないと、後々の法的トラブルや解雇無効のリスクを避けることができません。

 ① 直接手渡し

直接労働者に手渡しする方法が最も確実であり、労働者がその内容を理解した上で受け取ったことを確認できます。

手渡し時に受領サインをもらうことにより、交付したことが証拠として残るため、後の紛争を避けることができます。

 ② 郵送(内容証明郵便)

直接手渡しが難しい場合や、労働者が出勤していない場合は、内容証明郵便を使用することができます。

内容証明郵便では、郵便局が送付日や受取人の署名を証明してくれるため、解雇通知書が確実に労働者に届いた証拠を残すことができます。

 ③ 電子メールや社内システムの利用

近年では、電子メールや企業の社内システムを利用して解雇通知書を送付することもありますが、この方法には注意が必要です。

労働者が実際に受け取ったことを証明できる仕組み(受信確認機能など)を利用し、確実に受領したことを確認することが重要です。

交付方法は解雇の効力を左右するため、適切な手段を選択し、交付後には受領の確認を得ることが必須です。

解雇を弁護士に依頼するメリット

解雇問題に直面した場合、弁護士に依頼することには多くのメリットがあります。特に法的な複雑さや企業側の対応に不安がある場合、弁護士の専門的な知識と経験が大きな支えとなります。

(1) 法的アドバイスと適切な対応策の提示

解雇に関する法的問題は複雑で、労働契約法や労働基準法、判例に基づいた判断が求められます。

弁護士は労働法に精通しており、解雇理由が合法かどうかを正確に判断します。解雇が不当である場合、どのような法的手段を取るべきか(労働審判や裁判など)について、専門的なアドバイスを提供します。

(2) 解雇通知書や書類のチェックと交渉

解雇通知書が適切に作成されているか、手続きが法的に適正かどうかを確認することができます。

(3) 証拠の収集と整理

解雇に関する証拠(勤務成績、通信記録、就業規則など)の収集は、解雇が合法であるか、不当であるかを判断する上で重要です。弁護士は証拠収集の方法に精通しており、法的効力がある証拠を適切に収集・整理します。

このような証拠があれば、裁判での立場を有利にすることができます。

Last Updated on 9月 22, 2025 by kigyo-kumatalaw

この記事の執筆者:熊田佳弘

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