(1) 事案
福岡県内の会社に正職員として勤務する職員が、うつ状態にあることを理由として約1か月間の休職を数ヶ月の間隔を開けて3回繰り返した。3回目の休職から復帰後は時短勤務をしたものの、私用による休暇が増えていき、無断欠勤をするようになった。さらに、職務上の重大ミスをしたため、始末書を提出した。
その後、同職員は、労働局紛争調整委員会にあっせんを申請し、パワハラなどを理由として慰謝料500万円を請求した。
当職は、第1回目の休職の時点から相談を受けてアドバイスをし、労働局紛争調整委員会にあっせんには、代理人として出席した。
(2) 経過
紛争調整委員会のあっせんでは、3回の休職と復職の経緯、パワハラの有無が主な争点となった。
当方側から、事実関係を詳細に説明した上で、パワハラにあたる事実はなかったことを説明した。
その際に重視された事実は、次のとおりであった。
第1回目の休職時、経営者が職員本人の同意を得て、本人とともに医師面談を行った。医師によると、「同職員はうつ状態にあるが、良い悪いを繰り返しながら快方に向かって行けばと考えている。すぐに寛解するとは言えない。」とのことであった。
うつ状態の原因を医師に尋ねたが、会社が原因であるとは説明しなかった。
第2回目の休職と復職、第3回目の休職と復職を繰り返したが、そのときの医師の診断書にも、うつ状態の原因が会社側にあるとの記載はなく、むしろ、同職員の職場復帰の希望を後押しする趣旨の説明となっていた。
最終的に、パワハラの事実は認められず、あっせんは終了となった。
その後、同職員は自主退職したが、民事訴訟等は提起されず、事件終了となった。
(3) 弁護士所感
本件は、休職と職場復帰の問題とパワハラ問題がからんだ問題となった。
第1回の休職の時点から、医師に対しうつ状態の原因を尋ねることができており、医師から、会社が原因ではない旨の回答を得ていたこと、診断書にも本人の職場復帰希望が記載されていたことが、最終的にパワハラが認定されなかった大きな理由になっていると思われる。
他方、休職からの復帰の時点で、復職できる状況であったか否かについて、厳しく判断べきだったとも思われる。
Last Updated on 5月 15, 2024 by kigyo-kumatalaw
この記事の執筆者:熊田佳弘 私たちを取り巻く環境は日々変化を続けており、様々な法的リスクがあります。トラブルの主な原因となる人と人の関係は多種多様で、どれ一つ同じものはなく、同じ解決はできません。当事務所では、まず、依頼者の皆様を温かくお迎えして、客観的事実や心情をお聞きし、紛争の本質を理解するのが最適な解決につながると考えています。どんなに困難な事件でも必ず解決して明るい未来を築くことができると確信し、依頼者の皆様に最大の利益を獲得して頂くことを目標としています。企業がかかえる問題から、個人に関する問題まで、広く対応しています。早い段階で弁護士に相談することはとても重要なことだと考えています。お気軽にご相談にお越しください。 |