1ハラスメントとは
ハラスメントとは、相手が嫌がることをして不快感を覚えさせる行為のことをいいます。
職場においては、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)などがしばしば問題になります。
ハラスメントは、従業員の離職などにつながることがあるため、企業は未然に防止するための措置を講ずる必要があります。
ハラスメントは、通常「○○ハラスメント」などと、別の単語と組み合わせて使用されます。
2ハラスメントは犯罪なのか
(1)ハラスメントは、犯罪なのか
ハラスメントといっても、さまざまなレベルのものがあります。犯罪に該当するレベルのものもあれば、そうでないレベルのものもあります。
ハラスメントは大きく、「法令に定義されたもの」と「(法令上の定義はないが)社会通念上ハラスメントと認識されているもの」に分けることができます。
ア法令に定義されたもの
①セクシュアルハラスメント(セクハラ)
労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
②パワーハラスメント(パワハラ)
男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)
③マタニティハラスメント(マタハラ)
男女雇用機会均等法
育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)
④パタニティハラスメント(パタハラ)
育児・介護休業法
⑤ケアハラスメント(ケアハラ)
育児・介護休業法
イ社会通念上ハラスメントと認識されているもの
①モラルハラスメント(モラハラ)
②アルコールハラスメント(アルハラ)
など
(2)ハラスメントのレベル
ハラスメントはその悪質性などに応じて、以下のレベル(段階)に分けることができます。
ア刑法上の犯罪
刑法上の犯罪に該当する行為をした者は、逮捕・起訴されたり、刑事罰を受けたりする可能性があります。ハラスメントの中でも、きわめて悪質性が高い類型の行為といえます。
刑法上の犯罪に該当するハラスメントの例は以下のとおりです。
①暴行罪(刑法208条):他人に対して暴力を振るう行為
②傷害罪(刑法204条):他人に対して暴力を振るい、けがをさせる行為
③名誉毀損罪(刑法230条):公然と事実を摘示し、他人の名誉を毀損する行為
④侮辱罪(刑法231条):公然と他人を侮辱する行為
⑤強制わいせつ罪(刑法176条):暴行・脅迫を用いて、被害者の反抗を著しく困難にした上でするわいせつな行為
など
イ民法上の不法行為
ハラスメントによって被害者の権利を侵害し、損害を与えた場合には不法行為(民法709条)に該当する場合があります。
民法上の不法行為:故意または過失によって、他人に損害を与えること
例えば、「上司が部下を殴る」という行為により怪我を負わせた場合を考えます。
その場合、部下は、以下の損害を被ります。
①病院で治療を受ける。(治療費が発生します。)
②会社を休まなければならない。(休業損害が発生します。)
③精神的苦痛を受けます。(慰謝料が発生します。)
この場合、上司(加害者)は、不法行為(民法709条)により、部下に発生した損害を賠償しなければなりません。
※もちろん、①刑法上の暴行罪や傷害罪にも該当し、刑事上の処罰を受ける可能性があります。
その他にも、民法上の不法行為に該当するハラスメントの例として
・被害者を侮辱して精神的なダメージを与える行為
・セクハラを繰り返すことによって、被害者をPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥らせる行為
などがあります。
この場合も、被害者に発生した損害を賠償しなければなりません。
さらに、上司(加害者)を雇用していた企業も、安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づき、被害者に対する損害賠償責任を負う可能性があります。
ウ行政法上のハラスメント該当行為
ハラスメントの中でも、
①パワハラ
②セクハラ
③マタハラ、パタハラ
④ケアハラ
については、行政法による規制がなされています。
刑法上の犯罪に該当するか否か、民法上の不法行為に該当するか否かにかかわらず、企業は行政法が定義する4つのハラスメントが発生しないように、適切な措置を講じなければなりません。
もしハラスメントの防止・対応に関する措置を講じる義務を怠った場合、厚生労働大臣による行政処分の対象になります。
エ企業秩序違反行為
法令に反しない場合であっても、社内規程によって、法令を上回る厳格なハラスメント防止基準などを定めた場合には、企業はその基準に従ってハラスメントに該当するかどうかを判断します。
社内規程などで定められたハラスメント防止基準に違反した従業員に対しては、懲戒処分などの対応も検討することになります。
3ハラスメントの種類について
(1)ハラスメントの種類
ハラスメントには、次のようにさまざまな種類があります。
①パワーハラスメント
②セクシュアルハラスメント
③マタニティハラスメント/パタニティハラスメント
④ケアハラスメント
⑤その他のハラスメント
・リストラハラスメント
・モラルハラスメント
・ジェンダーハラスメント
・セカンドハラスメント
・アルコールハラスメントなど
(2)パワーハラスメント(パワハラ)
「パワーハラスメント(パワハラ)」とは、職場における優越的な関係を背景とした言動により、労働者の労働環境を害することを意味します。
パワハラの要件(定義)
労働施策総合推進法30条の2では、パワハラの要件を以下のとおり定めています。
パワハラの要件
①職場にて、優位的な関係に基づいて行われること
→上司の部下に対する言動、集団の個人に対する言動、知識や経験に優れた労働者のそうでない労働者に対する言動などが該当します
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
→合理的な業務指示や指導の範囲内であれば、パワハラには該当しません
③労働者の就業環境を害する言動であること
→典型的には、パワハラの6類型(後述)に当たる行為が該当します
パワハラの6類型
厚生労働大臣が定める指針では、パワハラの代表例として、以下の6類型を挙げています。
身体的な攻撃
・殴る
・蹴る
・物を投げる
精神的な攻撃
・人格否定
・侮辱
・過度に長時間の叱責
・他の従業員の面前での叱責
人間関係からの切り離し
・合理的な理由のない別室隔離や自宅研修
・集団での無視
過大な要求
・達成困難な目標を課し、達成できなかった場合に厳しく叱責する
・必要性がない業務の指示(お茶くみなど)
過小な要求
・能力に見合った仕事を与えない
・追い出し部屋に異動させて何もさせない
個の侵害
・プライベートな事柄を過度に詮索する
・職場外で継続的に監視する
・私物の写真を撮影する
(3)セクシュアルハラスメント(セクハラ)
「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」とは、職場における性的な言動により、労働者に対して不利益を与えることを意味します。
セクハラの要件(定義)
①職場において行われる性的な言動であること
→承諾のないボディタッチ、身体的な特徴に関する言動、性的な行動や考え方を詮索する言動などが該当します
②以下のいずれかに該当すること
(a)対価型セクハラ
「優遇する対価として性的な言動を要求する」「労働者の対応(例:拒否や抵抗)を理由に、その労働者を解雇・降格・減給にするなどの不利益を与える」タイプのセクハラ
(例)
・上司が部下に対して、昇進したければ性交渉に応じるように求める
・部下が上記を拒否したことを理由に、降格させる
(b)環境型セクハラ
「職場内での性的な言動」により、労働者の就業環境が害されるタイプのセクハラ
(例)
・職場の休憩時間中に性的な内容の会話をする
・事務所内にヌードポスターを掲示している
・懇親会の際にお酌を強制する
(4)マタニティハラスメント(マタハラ)/パタニティハラスメント(パタハラ)
「マタニティハラスメント(マタハラ)」とは、妊娠・出産・育児に関する言動により、女性労働者の就業環境を害することを意味します。
「パタニティハラスメント(パタハラ)」とは、育児に関する言動により、男性労働者の就業環境を害することを意味します。
マタハラ・パタハラに当たる言動の例
・「(出産や育児で)休むなら仕事を辞めてほしい」「休むことで他の人に迷惑が掛かっていることを自覚するように」などと言う
・産前産後休業や育児休業を取得することを理由に、役職を剥奪する
・産前産後休業や育児休業を取得することを理由に、派遣社員との契約を更新しない
(5)ケアハラスメント(ケアハラ)
「ケアハラスメント(ケアハラ)」とは、介護休業の利用に関する言動により、労働者の就業環境を害することを意味します。
ケアハラに当たる言動の例
・「(介護休業により)休むなら仕事を辞めてほしい」「休むことで他の人に迷惑が掛かっていることを自覚するように」などと言う
・介護休業を取得することを理由に、役職を剥奪する
・介護休業を取得することを理由に、有期雇用労働者との契約を更新しない
(6)モラルハラスメント(モラハラ)
「モラルハラスメント(モラハラ)」とは、労働者に対する精神的な嫌がらせ全般を意味します。
職場において行われる、優越的な関係を背景とした精神的な嫌がらせはパワハラに当たります。これに対してモラハラには、優越的な関係が背景にある場合に限らず、対等な関係にある者の間で、あるいは劣位者から優越者に対して行われる嫌がらせも該当します。
(例)
・同期入社の他の従業員から日常的に暴言を受けている
・部下が自分に聞こえるところで悪口を言っている
・仕事で関わりのない他の部署の従業員に付きまとわれている
など
(7)ジェンダーハラスメント
「ジェンダーハラスメント」とは、性別によって社会的役割が異なるという固定観念に基づき、嫌がらせや差別を行うハラスメントです。
セクハラとは異なり、ジェンダーハラスメントは必ずしも性的な言動であるとは限りません。「男性だからすべき」「女性だからであるべき」などの固定観念に基づいて、労働者に対して差別的・不平等な取り扱いをすることがジェンダーハラスメントに当たります。
(例)
・女性であることを理由にお茶くみをさせる
・男性であることを理由に営業を担当させる
など
なお、性差を考慮して男女間で異なる取り扱いをする場合でも、その区別が合理的であれば、ジェンダーハラスメントには当たりません。
(8)アルコールハラスメント(アルハラ)
「アルコールハラスメント(アルハラ)」とは、労働者に対して行われる、飲酒に関する嫌がらせや迷惑行為全般を意味します。
飲み会への参加・不参加や、参加した場合に酒類を飲むかどうかは、労働者が自由に決めるべき事柄です。飲み会への参加や飲酒を強制する行為は、アルハラに該当します。
また、飲み会であることや酔った雰囲気などにかこつけて、労働者が不快に感じる行為をすることもアルハラに当たります。
(例)
・従業員同士の懇親を目的とする飲み会への参加を強制する
・アルコールへの耐性が弱い従業員に無理やり酒を飲ませる
・「無礼講なんだから」などと言い、部下の従業員に対して異性に関する好みを執拗に質問する
・酒に酔っていることを言い訳にして、他の従業員に対してボディタッチをする
など
4ハラスメントによる影響やリスクとは
社内でハラスメントが発生した場合、企業・被害者・加害者の全てに不利益が発生します。企業は、多方面に弊害の大きいハラスメントの発生を、できる限り未然に防がなければなりません。
(1)企業
社内でハラスメントが横行すると、
①従業員の離職率が上がり、優秀な人材の流出につながります
②「ハラスメントが行われている企業だ」という評判が広まり、新卒採用や中途採用がうまくいかないといった悪影響が生じます。人材の確保が困難になると、企業の中長期的な成長は望めません。
また法的には、以下のリスクを負います。
③安全配慮義務違反(労働契約法5条)または使用者責任に基づき、被害者から損害賠償請求を受ける
④セクハラ・パワハラ・マタハラ・パタハラ・ケアハラについては、企業が対応・防止に関する雇用管理上必要な措置を講じていないと判断された場合、厚生労働大臣による行政処分を受ける
(2)被害者
ハラスメントの被害者は、就業環境が害されてしまい、これまでどおりに働くことはできなくなります。
また、メンタルヘルスが悪化し、うつ病などの精神疾患を発症する可能性があります。中には、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの後遺症が残るケース・自殺に至ってしまうケースもあります。
そして、「被害者の家族」へも影響が大きいです。例えば、うつ病になり、仕事・家事・育児などができなくなったり、うつ病を原因として離婚したりといった事態になってしまうかもしません。
もちろん、加害者や企業に対する損害賠償請求は可能ですが、それだけで全ての精神的なダメージが癒えるわけではありません。
(3)加害者
ハラスメントの加害者には、主に以下の悪影響があります。
①加害者自身の評判を落とす・社会的地位を失う
②懲戒処分を受ける
③被害者から損害賠償請求を受ける可能性がある(民法709条)
④刑法上の犯罪に該当すれば罪を問われる
5状況別のハラスメントの原因とは
ハラスメントが発生する原因としては、以下に挙げるようなさまざまなパターンが考えられます。
(1)コミュニケーション不足
全てのハラスメントに共通しているのは、そもそもコミュニケーションが不足している、ということです。
ハラスメントは「相手の主観」によるところが大きく、何を嫌と感じるかは十人十色です。本来であれば、コミュニケーションを通して、相手の性格や抱えている事情などを知ることができます。
しかし、コミュニケーションが不足していると、そうした情報を把握できず、結果として相手の性格を無視した言動・配慮に欠けた言動となり、ハラスメントへと発展してしまうリスクが高まります。
(2)個人の価値観の違い
ハラスメントが発生した際には、被害者が深刻なショックを受けている一方で、加害者は悪気がないというケースがあります。このような場合、被害者と加害者の価値観に大きなずれが生じています。
ハラスメントに関する現代の常識からすれば、言動を受ける側の感じ方を基準として判断しなければなりません。つまり、被害者と加害者の価値観にずれがあるならば、基本的には加害者側が是正に努めるべきだということです。
(3)アンコンシャス・バイアス
「アンコンシャス・バイアス」とは、「無意識の偏見」を意味する言葉です。自分は差別的ではないと思っていても、これまで過ごしてきた環境などによってアンコンシャス・バイアスが定着し、気づかないうちにハラスメントを行ってしまうケースがあります。
(4)性別役割分担意識
性別役割分担意識とは、「男は仕事・女は家庭」のように、男性・女性という性別を理由として役割を分ける考え方のことです。性別役割分担意識が強いと、セクハラをしてしまう傾向が高まります。
(5)組織風土や職場環境
パワハラの発生には、組織風土や職場環境が大きく影響します。パワハラは基本的に、上から下へ行われます。そのため、「上に立つ者は特別な権利をもっている」といった組織風土・職場環境が根付いてしまうと、パワハラが起こりやすくなるのです。
(6)業務量の配分が不適切
マタハラ・パタハラ・ケアハラは、労働者が産前産後休業・育児休業・介護休業を取得することに伴い、業務のしわ寄せが行く他の労働者によって行われるケースが多いです。
しかし、産前産後休業・育児休業・介護休業によって他の労働者の業務状況がひっ迫するようでは、そもそも業務量の配分が不適切といえます。各休業の取得は労働者の権利であり、企業側はそれを織り込んだ上で業務配分を決めなければなりません。
6ハラスメントに関係する法律
ハラスメントに関しては、以下に挙げる法令においてさまざまな規制が設けられています。企業がハラスメントの防止に取り組む際は、各法令における規制内容を正しく理解することが大切です。
(1)労働安全衛生法
労働安全衛生法10条以下では、企業に対して、労働者の安全・衛生に関する管理者・責任者などを設置する義務が課されています。
労働者の安全・衛生に関する管理者・責任者は、ハラスメントに関する相談窓口を担当するケースも多いです。企業としては、安全・衛生に関する対応マニュアルや研修の中にハラスメントに関する内容を盛り込んで、管理者・責任者の教育に取り組むべきでしょう。
(2)労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
労働施策総合推進法30条の2以下の規定は「パワハラ防止法」とも呼ばれており、パワハラの防止・対応に関する事業主の責務を定めています。
特に、同条3項に基づき厚生労働大臣が定めた指針については、企業がパワハラの防止・対応に関する措置を講ずる上で、十分に参考とすることが求められます。
※厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
(3)男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法11条ではセクハラについて、11条の3ではマタハラについて、それぞれの防止・対応に関する事業主の責務を定めています。
パワハラと同様に、セクハラ・マタハラについても厚生労働大臣が指針を定めており、企業は指針の内容を踏まえた上で適切な措置を講じなければなりません。
※厚生労働省「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
(4)育児・介護休業法
育児・介護休業法25条では、
・育児休業に関するマタハラ・パタハラ
・介護休業に関するケアハラ
について、それぞれの防止・対応に関する事業主の責務を定めています。
育児介護休業法で規制されるハラスメントについても、厚生労働大臣が指針を定めており(同法28条)、企業は十分にその内容を踏まえた措置を講じる必要があります。
※厚生労働省「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」
(5)その他
ハラスメントに該当する行為は、上記の各法律のほか、刑法・民法に違反する場合があります。
刑法では暴行罪・傷害罪・名誉毀損罪・侮辱罪・強制わいせつ罪などの犯罪について、民法では不法行為に基づく損害賠償などについて定めています。
これらのルールに抵触するハラスメントは、悪質性の高いものとして、企業としても厳正な処分を検討すべきです。
7ハラスメント防止のために事業主が講ずべき措置(予防法)
各ハラスメントに関して厚生労働大臣が定めた指針では、ハラスメント防止のために事業主が講ずべき措置として、以下の内容を共通して挙げています。
(1)事業主の方針等の明確化・周知・啓発に関する措置
①職場におけるハラスメントの内容と、ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する
②職場におけるハラスメントに当たる言動を行った者については厳正に対処する旨の方針と、対処の内容などを定めて、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する
(2)相談・苦情に応じる体制の整備
①相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
②相談窓口の担当者が、相談に対して、内容・状況に応じ適切に対応できるようにする(被害を受けた労働者が相談を躊躇する例があることなども踏まえ、広く相談に対応する)
(3)ハラスメントが発生した場合の迅速・適切な事後対応
①事実関係を迅速・正確に把握する
②ハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う
③ハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、行為者に対する措置を適切に行う
④改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発するなど、再発防止に向けた措置を講じる
(4)その他の措置
①ハラスメントに関する事後対応に当たり、相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に対して周知する
②ハラスメントの相談をしたことなどを理由として、労働者が解雇その他の不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する
8ハラスメントが発生したときの対応方法
社内におけるハラスメントの発生が発覚した場合は、以下の手順で迅速かつ適切に対応することが大切です。
(1)事実確認を行う
まずは、ハラスメントに関する正確な事実確認を行う必要があります。被害者・行為者に加えて、必要に応じて周囲の従業員などからも事情を聴き、ハラスメントが行われていたか否かやハラスメントの内容などを把握します。
正確な事実確認は、その後の被害者のフォローや、行為者の処分などを適切に行うための前提となりますので、慎重に行う必要があります。
(2)関係者に対する措置(処分・フォロー)を講じる
事実関係を把握しハラスメントを確認できたら、被害者・行為者のそれぞれに対して、何らかの措置を講じましょう。
真っ先に考えられるのは、配置転換によって被害者と行為者を引き離すことです。また、被害者については産業医と連携して精神面のフォローを行いつつ、行為者についてはハラスメントの内容に応じた懲戒処分も検討すべきでしょう。
なお、行為者に対する懲戒処分は、ハラスメントの内容等に比して重すぎる場合は無効となるおそれがあるので注意が必要です(労働契約法15条)。
(3)再発防止策を適切に実施する
ハラスメントが発生した場合は、それを機に社内のハラスメント防止体制を強化し、再発防止に努めることが肝要です。
第一にハラスメントの原因を調査した上で、同じハラスメントが二度と発生しないように予防策を講じましょう。また、ハラスメントの発生や経過を社内全体に周知して注意喚起を図ることも、ハラスメント撲滅の空気を醸成する観点から効果的です。
8弁護士によるハラスメント対応
ハラスメント問題は、適切な理解と対応が求められる時代になっています。
現在では様々なハラスメントの種類があります。何ら違法とならないハラスメントから犯罪に該当するハラスメントまで存在します。
企業は、それぞれのハラスメントに対して的確に対応していくことが求められていますが、経営に専念しながらハラスメントのレベルの違いを理解して対応していくことは容易ではありません。
弁護士は、ハラスメント問題について、企業が負うことになるリスクやデメリットに対して法的なリスクを最小化するためのアドバイスが可能です。また、発生してしまったハラスメントに対しても問題が大きくならないように解決を図ることが可能になります。各種のハラスメントにお悩みの企業様は、当事務所に是非ご相談ください。
Last Updated on 9月 24, 2024 by kigyo-kumatalaw
この記事の執筆者:熊田佳弘 私たちを取り巻く環境は日々変化を続けており、様々な法的リスクがあります。トラブルの主な原因となる人と人の関係は多種多様で、どれ一つ同じものはなく、同じ解決はできません。当事務所では、まず、依頼者の皆様を温かくお迎えして、客観的事実や心情をお聞きし、紛争の本質を理解するのが最適な解決につながると考えています。どんなに困難な事件でも必ず解決して明るい未来を築くことができると確信し、依頼者の皆様に最大の利益を獲得して頂くことを目標としています。企業がかかえる問題から、個人に関する問題まで、広く対応しています。早い段階で弁護士に相談することはとても重要なことだと考えています。お気軽にご相談にお越しください。 |