
育児介護休業法改正について
育児介護休業法改正について
法令名を次のように記載しています。
① 育児介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
② 改正育児介護休業法、改正法…「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」による改正(完全施行)後の「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
③ 改正次世代育成支援対策推進法…「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」による改正(完全施行)後の「次世代育成支援対策推進法」
【2025年4月等施行】育児介護休業法等改正とは
(1) 育児介護休業法等改正の目的
改正法の目的は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、労働者を支援する措置を講じることです。
働き方改革や育児休業・介護休業などに関するさまざまな改正が盛り込まれています。
(2) 公布日・施行日
公布日 2024年5月31日
施行日 2025年4月1日等
※ 次世代育成支援対策推進法の有効期限延長は、公布日より施行
※ 働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設に関する規定、ならびに仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化に関する規定は、2025年10月1日予定)
育児介護休業法等改正の概要
改正法による変更ポイントは、大きく分けて以下の3点です。
(1)子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
改正法による変更ポイントの1つ目は、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充です。
(a) 働き方の柔軟化措置および個別の周知・意向確認義務の新設
事業主には、3歳以上~小学校就学前の子を養育する労働者に関して、職場のニーズを把握した上で柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることが義務付けられます(改正法23条の3第1項)。
柔軟な働き方を実現するための措置としては、以下のうち、事業主が2つ以上を選択して講ずることが求められます。
① 始業時刻等の変更
② テレワーク(10日/月)
③ 短時間勤務
④ 新たな休暇の付与(10日/年)
⑤ その他働きながら子を養育しやすくするための措置(保育施設の設置運営等)
また、当該措置については、対象労働者に対する個別の周知および意向確認を行うことも義務付けられます(同条5項)。
さらに、当該措置に関する申出をしたこと、実際に当該措置が講じられたこと、または労働者が事業主に対して伝えた意向の内容を理由に、労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは認められません(同条7項)。
(例) 法定の3歳までの短時間勤務はある会社の場合、他については拡張や新設が必要となります。義務内容は3歳から就学前ですが、0歳から使える制度とするかの検討も必要になりそうです。
この措置の施行日は2025年11月30日までの政令で定める日(政令案では2025年10月1日予定)とされています。
(b) 残業免除の対象範囲拡大|3歳以上小学校就学前の子も対象に
一定の年齢に達するまでの子を養育する労働者は、原則として事業主に対する請求により、所定労働時間を超える労働(=残業)が免除されます。
現行法では、所定外労働の制限(残業免除)の対象となるのは、3歳になるまでの子を養育する労働者に限られています。
改正法では、残業免除の対象が小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大され、仕事と育児の両立がしやすくなります(改正法16条の8)。
(c) 子の看護休暇の拡大|行事参加等の場合も取得可能に
「看護休暇」とは、負傷しまたは疾病にかかった子の世話などを行うための休暇です。対象となる子を養育する労働者は、1年度当たり5日(対象となる子が2人以上の場合は10日)を限度に看護休暇の取得が認められています。
看護休暇については以下の変更が行われ、より幅広い労働者が看護休暇を効果的に取得できるようになります(改正法16条の2・16条の3)。
学級閉鎖・子の行事に参加する場合等にも、看護休暇を取得できるようになります。
看護休暇の対象となる子が、現行の小学校就学前から小学校3年生まで拡大されます。
勤続6カ月未満の労働者を、労使協定に基づいて看護休暇の取得対象外とすることができなくなります。
(d) 3歳未満の子を育てる労働者については、努力義務の対象にテレワークを追加
事業主には、3歳未満の子を養育する労働者が育児休業をしていない場合に、在宅勤務等(テレワーク)の措置を講ずることが新たに努力義務として課されます(改正法24条2項)。
在宅勤務等の措置を講じなくても罰則等はありませんが、事業主においては積極的に当該措置を講じ、労働者の仕事と育児の両立を助けることが期待されます。
(e) 仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化
労働者が事業主に対して妊娠・出産などを申し出た場合には、事業主は労働者に対して、仕事と育児の両立に関する個別の意向を聴取し、その意向に配慮することが義務付けられます(改正法21条2項・3項)。
また事業主は、労働者から聴取した意向の内容を理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはなりません(同条6項)。
(2)育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
改正法による変更ポイントの2つ目は、育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化です。
(a) 育休取得状況の公表義務の拡大|常時雇用労働者数1,000人超→300人超
現行法では、常時雇用する労働者の数が1,000人を超える事業主に、毎年1回以上、育児休業の取得状況を公表する義務が課されています。
改正法では、育休取得状況の公表義務の対象が、常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主まで拡大されます(改正法22条の2)。公表義務の範囲拡大に伴い、より幅広い企業において育児休業の取得促進が期待されます。
(b) 行動計画策定時における状況把握・数値目標設定の義務付け
今回の法改正においては、次世代育成支援対策推進法に関する改正も盛り込まれています。
「次世代育成支援対策推進法」とは、次世代育成支援対策に関する基本理念や行動計画策定指針などを定めた法律です。
急速な少子化の進行や家庭・地域を取り巻く環境の変化に鑑み、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ育成される社会の形成に資することを目的としています。
次世代の子どもを育成する観点からは、労働者による育児休業の取得を促進し、仕事と育児の両立化を図ることが欠かせません。
そこで今回の法改正により、従業員数100人超の事業主に対して、行動計画策定時に育児休業の取得状況等に係る状況把握および数値目標の設定が新たに義務付けられます(改正次世代育成支援対策推進法12条3項)。定量的な把握を義務付けることにより、育児休業取得のさらなる促進が期待されます。
(c) 次世代育成支援対策推進法の有効期限を10年間延長
次世代育成支援対策推進法は、今回の法改正以前においては2025年3月31日限りで失効するものと定められていました。
今回の法改正により、次世代育成支援対策推進法の有効期限が2035年3月31日まで10年間延長されました。
少子化が加速する状況において、引き続き次世代の子どもの育成につながる社会を形成するための施策を行う必要性が高いことを踏まえ、有効期限が延長されたものと考えられます。
子育てサポート企業を認定する「くるみんマーク」も、基準を見直して継続されます。
(3)介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
(a) 両立支援制度|個別周知・意向確認・情報提供・研修等の義務化
改正法では、介護休業の制度や仕事と介護の両立支援制度について、周知浸透や利用促進を図るために以下の変更が行われます。
事業主は、労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た場合において、介護休業の制度や両立支援制度などにつき、個別の周知および意向確認を行うことが義務付けられます(改正法21条4項)。
事業主は、40歳に達した労働者などに対して、介護休業の制度や両立支援制度などに関する早期の情報提供を行うことが義務付けられます(同条5項)。
事業主は、介護休業の申出が円滑に行われるようにするため、労働者に対する研修の実施や相談体制の整備など、雇用環境整備の措置を講ずることが義務付けられます(改正法22条)。
(b) 介護休暇の対象範囲拡大
「介護休暇」とは、要介護状態にある家族の世話を行うための休暇です。対象家族のいずれかが要介護状態にある労働者は、1年度当たり5日(対象家族が2人以上の場合は10日)を限度に介護休暇の取得が認められています。
介護休暇の対象家族
・配偶者
・父母
・子
・祖父母
・兄弟姉妹
・孫
・配偶者の父母
介護休暇については、勤続6カ月未満の労働者を、労使協定に基づいて取得対象外とすることができなくなります(改正法16条の6)。その結果、就職したばかりの労働者であっても、一律に介護休暇の取得が可能となります。
(c) 家族を介護する労働者については、努力義務の対象にテレワークを追加
事業主には、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が介護休業をしていない場合に、在宅勤務等(テレワーク)の措置を講ずることが新たに努力義務として課されます(改正法24条4項)。
在宅勤務等の措置を講じなくても罰則等はありませんが、事業主においては積極的に当該措置を講じ、労働者の仕事と介護の両立を助けることが求められます。
事業者対応のポイント
事業者においては、特に改正法によって義務化される内容を正しく理解し、自社における制度や社内規程などを更新することが求められます。
また、新たな制度やルールについて労働者に周知することや、育児や介護を行う労働者に対して適切に配慮できるように、社内研修などを通じて啓発を行うことも重要です。
改正法による変更点を踏まえて、さまざまな措置や取り組みを通じて仕事と育児・介護の両立を促し、いっそう働きやすい環境への改革を目指す必要があります。
法改正に合わせて弁護士にご相談を
育児・介護休業法の改正にあたっては、企業は制度内容の正確な理解と実務対応が求められます。
改正内容に基づき就業規則の見直しや社内制度の整備が必要となる場合も多く、対応を誤れば労働者からの紛争や行政指導のリスクが高まります。
このため、労働法制に精通した弁護士に相談することで、最新の法改正内容を踏まえた適切な対応策を講じることが可能となります。
また、制度導入時の説明義務や運用ルールの明確化、社員からの個別相談への対応方法など、実務上の課題にも助言が得られます。門家の支援を受けることでコンプライアンスを確保し、円滑な制度運用につなげることができます。
法改正に合わせて弁護士へのご相談をお勧めします。

Last Updated on 6月 17, 2025 by kigyo-kumatalaw
この記事の執筆者:熊田佳弘 私たちを取り巻く環境は日々変化を続けており、様々な法的リスクがあります。トラブルの主な原因となる人と人の関係は多種多様で、どれ一つ同じものはなく、同じ解決はできません。当事務所では、まず、依頼者の皆様を温かくお迎えして、客観的事実や心情をお聞きし、紛争の本質を理解するのが最適な解決につながると考えています。どんなに困難な事件でも必ず解決して明るい未来を築くことができると確信し、依頼者の皆様に最大の利益を獲得して頂くことを目標としています。企業がかかえる問題から、個人に関する問題まで、広く対応しています。早い段階で弁護士に相談することはとても重要なことだと考えています。お気軽にご相談にお越しください。 |