悪い口コミや風評被害が企業に及ぼす影響と対策|弁護士が解説

悪い口コミや風評被害が企業に及ぼす影響と対策

企業にとって、悪い口コミや風評被害は経営基盤を揺るがしかねない深刻なリスクです。まず、インターネットやSNSの普及により、個人の発信が瞬時に広範囲へ拡散する時代となりました。

一度ネガティブな評価が拡散すれば、商品やサービスの品質に直接関係のない事実誤認や誇張が含まれていたとしても、多くの消費者にマイナスイメージを与えてしまいます。 その結果、顧客離れや新規顧客の獲得難につながり、売上低下を招く可能性があります。

また、悪評は取引先や金融機関の信頼を損ね、資金調達やビジネス提携に影響することもあります。

さらに、採用活動においても「評判の悪い会社」という印象が定着すれば優秀な人材の応募が減り、組織力の低下を招きかねません。

加えて、従業員の士気低下や離職率の上昇といった内部への悪影響も無視できません。

このように、悪い口コミや風評は企業の信用、収益、人材確保の全てに波及します。

したがって、企業は平時から誠実な顧客対応や情報発信を徹底し、万一の際には迅速かつ適切に対応する危機管理体制を整えることが不可欠です。

ネットでの口コミと風評被害について

近年、インターネットの普及とSNSの発達により、消費者は容易に商品やサービスに関する感想を発信できるようになりました。

これにより、口コミは企業活動において大きな影響力を持つ存在となっています。ポジティブな口コミは新規顧客の獲得やブランド価値の向上に寄与する一方、ネガティブな口コミや風評被害は企業の信用と業績に深刻な打撃を与えかねません。

特にネット上では情報が拡散するスピードが速く、また一度拡散した情報を完全に削除することが難しいため、企業にとっては長期的なリスク管理が不可欠です。

まず、口コミの影響について考えると、消費者は購入や契約の際に他者の体験談を重視する傾向があります。

近年の調査でも、多くの消費者が「企業の広告よりも口コミを信頼する」と回答しており、口コミは購買行動を左右する重要な要素です。したがって、悪い口コミが拡散すれば、商品やサービスの品質が必ずしも低くなくても、消費者の購買意欲を削ぐ結果となります。

さらに、風評被害は必ずしも事実に基づかない情報からも生じます。

例えば、一部の誤解や誇張された表現、あるいは根拠のない噂であっても、ネット上では「炎上」として瞬時に広がることがあります。

これにより、企業は売上の減少だけでなく、取引先や金融機関からの信用低下、人材採用への悪影響といった多面的な不利益を被る可能性があります。また、従業員にとっても、自社が「評判の悪い会社」と見なされることはモチベーション低下や離職につながる恐れがあり、組織全体のパフォーマンスを損なう要因となります。

こうしたリスクに対処するため、企業は平時からの取り組みが重要です。

具体的には、顧客対応の質を高め、クレームや不満の声に迅速かつ誠実に対応する体制を整えることが第一です。

また、自社に関するネット上の情報を定期的にモニタリングし、誤情報や悪質な書き込みが拡散した場合には、速やかに事実関係を説明し、透明性をもって対応することが求められます。さらに、法的に許容される範囲で削除要請や発信者への対応を行うことも必要です。

結論として、ネット社会における口コミと風評は、企業にとって「リスク」であると同時に「チャンス」でもあります。ポジティブな体験を顧客に提供し、それを自然な形で共有してもらうことができれば、企業の成長に大きく寄与します

他方で、ネガティブな情報が拡散した際には、その影響は短期的にも長期的にも甚大であるため、日常的な信頼構築と危機管理体制の整備が欠かせません。企業は、口コミや風評を単なる外部要因と捉えるのではなく、自社の経営戦略に組み込むべき重要課題として取り組む必要があるのです。

ネットでの悪い口コミ、風評被害を放置することのリスク

現代の企業経営において、ネット上の口コミや評判は顧客の購買行動に直結する重要な要素となっています。SNSや口コミサイト、掲示板などは誰もが容易に情報を発信でき、内容が事実であるか否かにかかわらず短時間で拡散します。

このような状況下で、悪い口コミや根拠の乏しい風評を放置することは、企業にとって多方面に深刻なリスクをもたらします。

(1) 第一に、売上・顧客基盤への直接的な打撃です。

消費者は広告よりも第三者の意見を信頼する傾向が強く、ネガティブな評価が複数見受けられると商品やサービスの選択肢から外されやすくなります。

悪い口コミを放置すれば、実際の品質やサービス内容に問題がなくても、新規顧客の獲得は困難になり、既存顧客の離反も進みます。

特に飲食、観光、医療、教育など評判に依存する業界では影響が顕著です。

(2) 第二に、信用力の低下です。

インターネット上の評判は、消費者だけでなく取引先や金融機関、人材採用市場にも波及します。悪評が放置され続けると、「信頼に足る企業ではない」との印象を与え、融資や提携交渉に不利となり、優秀な人材の応募も減少します。結果として、企業の成長や競争力強化が阻害される恐れがあります。

(3) 第三に、社内への悪影響です。

従業員は世間からの評価に敏感であり、自社がネット上で批判され続ける環境に置かれると、誇りやモチベーションが低下します。

さらに「評判の悪い会社に勤めている」とのレッテルは離職意向を高め、組織全体の士気低下につながります。人材の流出が続けば、サービスの質も低下し、負の連鎖が生じます。

(4) 第四に、法的リスクや企業イメージの固定化です。

風評被害の中には事実無根の中傷や虚偽情報が含まれる場合もありますが、これを放置すると「沈黙は肯定」と受け取られかねず、誤情報が事実として定着してしまいます。  その結果、長期的にブランド価値が毀損され、回復には膨大な労力とコストが必要になります。また、

企業が不適切な対応を取った場合には逆に炎上を招くこともあり、専門的な法的助言や広報戦略が求められます。

以上のように、ネットでの悪い口コミや風評被害を放置することは、売上低下、信用喪失、人材難、内部崩壊、ブランド価値毀損といった多重のリスクを招きます。従って企業は、放置せず早期に事実確認を行い、誠実かつ透明性のある対応を徹底することが不可欠です。平時から口コミや評判をモニタリングし、万一の際には迅速に危機管理を発動できる体制を整えておくことが、持続的成長の前提条件といえるでしょう。

悪質な口コミや風評被害への対策方法

(1) モニタリング体制の構築

まず重要なのは、自社に関する情報を継続的に把握することです。SNSや口コミサイト、掲示板などを定期的にチェックする仕組みを整え、悪質な書き込みや誤情報を早期に発見できる体制を構築します。

近年は専門のモニタリングサービスやAIによる解析ツールも普及しており、これらを活用することが効果的です。

(2) 誠実かつ迅速な顧客対応

悪い口コミが事実に基づく顧客の不満である場合、放置せず誠実に対応することが重要です。迅速な謝罪や改善策の提示は、企業の真摯な姿勢を示し、逆に評価の向上につながる場合もあります。不満の声を改善に生かす姿勢が、信頼の再構築につながります。

(3) 虚偽情報や悪質な投稿への法的対応

事実無根の中傷や誹謗が拡散している場合には、適切な法的措置を検討する必要があります。

サイト運営者への削除依頼や、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求、損害賠償請求などが代表的な手段です。法的対応を行うか否かは状況に応じて判断されるべきですが、毅然とした姿勢を示すことで再発防止につながることもあります。

(4) 危機管理広報(クライシス・コミュニケーション)の徹底

風評被害が拡散してしまった場合には、広報部門を中心に正確な情報を発信し、透明性のある説明を行うことが不可欠です。

沈黙を続ければ「企業が事実を隠している」と受け取られかねず、被害が拡大します。誤解を解き、事実をわかりやすく公表することで信頼回復を図ることが重要です。

(5) 平時からの信頼構築

最も有効な対策は、日頃から顧客・取引先・従業員との信頼関係を築くことです。

高品質なサービスの提供や誠実な対応を徹底すれば、万一ネガティブな情報が拡散した場合でも「この会社なら誠実に対応するはずだ」という社会的な信用が盾となり、被害を最小限に抑えられます。

結論として、悪質な口コミや風評被害への対策は「早期発見」「誠実対応」「法的手段」「的確な情報発信」「平時からの信頼構築」という五つの柱を中心に進める必要があります。企業がこれらを一貫して実行すれば、風評被害を未然に防ぎ、万一の際にも迅速に信頼回復を図ることができるのです。

風評被害に対する対応策

(1) 削除請求

風評被害対策として、風評被害を生じさせている投稿を削除するように求めること、すなわち、削除請求が考えられます。

インターネットで自社の商品を検索すると、検索の上位に悪評を掲載したウェブサイトが表示されてしまう場合など、削除請求を検討します。

法律上は、そのような投稿を行った本人、あるいはそのような投稿がなされたウェブサイトの管理運営者に対して削除請求を行うことが可能です。

しかし、投稿のほとんどは匿名で、誰が投稿を行ったかは明らかでない場合がほとんどです。そのため、実務上は、ウェブサイトの管理運営者に対して削除請求を行うことになります。

具体的には、風評被害を生じさせている投稿が企業の名誉権を侵害するものとして、投稿の削除を求めていくことになります。

この場合、投稿が企業の名誉を毀損していることを主張する必要があります。

また、風評被害を生じさせている投稿に関し、名誉毀損が認められない場合であっても、その投稿が、企業が著作権を持つ写真などを使用している場合には、著作権侵害を主張することで、投稿を削除することができる場合があります。

削除請求を行う方法として、通知書を発送し、裁判外で削除を求める方法、裁判所に訴訟または仮処分を申立て裁判上の手続で削除を求める方法が考えられます。

削除請求の場合、後述の発信者情報開示請求と異なり、ログの保存期間という時間的制約はありません。そのため、ウェブサイトの管理運営者に対し、裁判外での削除を求め、これに応じてもらえない場合は、訴訟または仮処分という裁判上の手続を行うことが可能です。

(2) 発信者情報の開示請求

風評被害対策としては、次に、風評被害を行った者の情報を開示するように求める、つまり発信者情報の開示請求を行うことが考えられます。

発信者情報の開示請求は、ウェブサイトの管理運営者に対して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)に基づいて行います。

インターネットで繰り返し自社製品の悪評を投稿する者がいる場合や、投稿を削除しても同じような投稿が繰り返された場合など、投稿を削除するだけでなく、投稿を特定して、投稿者に法的責任を追及する場合には、発信者情報の開示請求を行うことになります。

発信者情報の開示請求を行う場合、ウェブサイトの管理運営者は、多くの場合、投稿者の住所や氏名などの個人情報を保有していません。

そこで、まず、投稿が行われたウェブサイトの管理運営者(コンテンツプロバイダ)に対して、投稿を行った者がどの通信回線を用いたかの情報(IPアドレス、タイムスタンプなど)の開示を求めます。そして、ウェブサイトの管理運営者から開示された情報に基づき、投稿者が利用していた回線を特定します。

そして、通信回線を提供していた事業者(アクセスプロバイダ)に投稿者の個人の情報の開示を求めます。

通信回線を提供している事業者は契約者の情報として、投稿者の個人情報を保有しているので、通信回線を提供する事業者がこれに応じれば,投稿者を具体的に特定することが可能になります。

ただし、通信回線を提供している事業者は、いつだれがどのIPアドレスを使用したのかといったログを保存していますが、このログの保存期間は、事業者ごとに異なり、多くの事業者は3ヶ月から6ヶ月しか保存していないとしています。

そのため、発信者情報の開示請求を行うには、ログの保存期間という時間的制約が存在し、タイムスケジュールを逆算して的確な請求を行うことが重要です。

(3) 損害賠償請求 

発信者情報開示請求を経て、その後は、投稿者情報(住所、氏名)に基づき、投稿者に対して損害賠償を求めることになります。

この場合、示談交渉にて損害賠償を求めるか、訴訟提起をするかがあります。

実際には、投稿をした者に対して、訴訟提起をする場合が多いです。

この点、ウェブサイトの管理運営者は、プロバイダ責任制限法3条1項において、「情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき」または「情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」に限り認められるとされています。これは、ウェブサイトの管理運営者は、投稿が違法かどうかを判断することが難しく、投稿が違法ではないのに削除した馬合はかえって投稿者から責任を追及される可能性があることに配慮したものです。そのため、ウェブサイトの管理運営者に損害賠償請求を行うことができる場合は少ないと考えられています。

弁護士にご相談ください。

▼関連する記事はこちら▼

ECサイトでよくあるクレームを紹介!弁護士が行えるサポートについても解説!

Last Updated on 10月 24, 2025 by kigyo-kumatalaw

この記事の執筆者:熊田佳弘

私たちを取り巻く環境は日々変化を続けており、様々な法的リスクがあります。トラブルの主な原因となる人と人の関係は多種多様で、どれ一つ同じものはなく、同じ解決はできません。当事務所では、まず、依頼者の皆様を温かくお迎えして、客観的事実や心情をお聞きし、紛争の本質を理解するのが最適な解決につながると考えています。どんなに困難な事件でも必ず解決して明るい未来を築くことができると確信し、依頼者の皆様に最大の利益を獲得して頂くことを目標としています。企業がかかえる問題から、個人に関する問題まで、広く対応しています。早い段階で弁護士に相談することはとても重要なことだと考えています。お気軽にご相談にお越しください。

法律相談のご相談はお電話で TEL:092-739-5115 受付時間 平日9:00~17:30 熊田法律事務所 法律相談のご相談はお電話で TEL:092-739-5115 受付時間 平日9:00~17:30 熊田法律事務所

ご相談の流れ