【解決事例】介護施設における雇止め、団体交渉

1 依頼者の概要

  業種 養護老人ホーム

  地区 福岡県内

  従業員数 約80名

2 事案

  依頼者は、看護師Aとの間で、期間の定めのある雇用契約(1年)を締結し、4回更新していた。看護師Aは、入所者に配る薬を頻繁に間違える、薬の置き場所を勝手に変更して他の職員が見つけられなくする、糖質制限されている入所者に対して糖分の入った飲料を飲ませるなどの問題行動を頻発した。

  看護師Aの親族に地域の有力者Bがおり、Bが依頼者に対して、本件以外のことでも依頼者に恫喝のようなクレームを繰り返しており(録音あり)、依頼者の業務に支障を来していた。

  他方、依頼者の職員は、看護師Aの親族Bに恐怖を感じており看護師Aに注意指導できない状況であった。

  依頼者は、5回目の契約更新を前に、看護師Aを雇止めしたいと考えて、雇止めの約5ヶ月前に依頼に至った。

3 経過

(1) 依頼者は、看護師Aに対し、一度も注意指導したことがなかった。

(2) 看護師Aの親族Bから恫喝のようなクレームが繰り返されることが予想されたが、速やかに、依頼者から看護師Aに対する注意指導書を作成して交付する方針とした。

(3) 注意指導書を作成するに際して、依頼者との打ち合わせを繰り返し、できるだけ客観的事実を明示することにした。あわせて、看護師Aを採用した当時の依頼者の責任者、看護師Aの問題行動を直接見聞きした他の看護師からの聴取をした。万一、訴訟等に移行した場合に備えて、陳述書を作成した。

   看護師Aの親族Bからのクレームを録音した内容を確認した。

(4) このように依頼者と打ち合わせを繰り返しているときに、合同労組から看護師Aが組合に加入したとの通知が届いた。

(5) 組合加入通知が届いたものの、予定通り、看護師Aに対して、注意書とともに、契約更新ができない旨の雇止め通知書を手渡した。

(6) その後、合同労組から団体交渉の申し入れがなされた。

(7) 第1回団体交渉

 ア 合同労組側の主張

  ① 採用時に「いつまでもいて欲しい。」と言われた。期間の定めのない雇用契約が成立している。

  ② 問題行動と指摘されているものは、いずれも客観的証拠に乏しく、軽微なものである。

  ③ 期間1年の雇用契約書が毎年作成されているが、単なる形式に過ぎず、実際は、期間の定めのない雇用契約である。

  ④ したがって、本件の雇止めは認められない。

 イ 当方側の主張

  ① 採用時の話は、一年更新を前提として、短期で退職して欲しくないために発言したものであり、期間の定めのない契約が成立したとは認められない。

  ② 問題行動については、職員からの聞き取りや写真などもあり、客観的な立証が可能である。入所者の薬の保管の問題や糖質制限にかかわるものがあり、重大な問題となっている。

  ③ 看護師Aに対して契約更新しないことを事前に伝えていた。

  ④ 一年更新の雇用契約書は当事者間の合意を明らかにするための客観的証拠であり、本件雇用契約書に不備はない。

  ⑤ 人員削減の必要性を説明し、契約更新を行わない判断に至ったことを説明した。

  ⑥ 雇止めには合理的な理由があり、雇止めは有効である。

(8) 第2回団体交渉

 ア 合同労組から同様な説明がなされた。

 イ 当方側からも、第1回と同様の説明を繰り返すとともに、看護師Aの親族Bによる恫喝のようなクレームについて具体的に説明した。

 ウ 第2回団体交渉の終了に際して、合同労組から和解案を提案するとのことであった。

(9) 合同労組からの和解提案

   合同労組から、雇止めを了承することを前提として、解決金として100万円(看護師Aの月収の約5ヶ月分)の支払を求める旨の提案がなされた。

(10) 当方側の回答

   当方側は、雇止めに合理的な理由あり解決金を支払う理由はないと判断し、合同労組に対して解決金を支払わない旨回答した。あわせて雇用期間満了により契約が終了することを通知した。

(11) 雇用契約満了後、看護師Aは出勤することなく、何らの法的手続もとらなかった。相当期間が経過したため、事件終了と判断した。

4 担当弁護士のコメント

  知り合いの方からの紹介により受任に至りました。

  看護師Aの問題行動が、長期間にわたって繰り返されており、しかも、看過できない重大な行為であったことから、まず、事実関係の調査、確定の作業から開始しました。

  依頼者の担当者におかれては、大変な作業であっただろうと推測されます。

  予想通り、看護師A及び合同労組の主張は、極めて厳しいものでした。

  依頼者と打ち合わせをし、関係者のお話を聞きながら、事実関係を一つ一つ確定しながら進めることができたことが、良い結果につながったと考えています。

Last Updated on 8月 20, 2026 by kigyo-kumatalaw

この記事の執筆者:熊田佳弘

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