
企業の不祥事や法令違反を明らかにする手段として、「内部告発」と「内部通報」があります。両者は混同されやすいですが、通報先や目的、企業に与える影響などに違いがあります。
1 内部告発とは
内部告発とは、企業の役員や従業員などが、社内で知り得た不正行為や法令違反を、行政機関、報道機関などの外部に知らせる行為をいいます。例えば、会社による粉飾決算、品質データの改ざん、違法な長時間労働などを、監督官庁やマスコミに知らせる場合です。
内部告発は、企業内部で問題が解決されない場合や、組織的な隠蔽が疑われる場合などに行われることが多いです。社会的な問題を明らかにする意義がある一方、企業の信用失墜や取引先との関係悪化など、経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
2 内部通報とは
内部通報とは、企業内で発生した不正行為や法令違反などについて、従業員等が社内の相談窓口や、企業が指定した外部の弁護士窓口などに報告する行為をいいます。
内部通報の主な目的は、企業が問題を早期に把握し、自主的に調査・是正することで、不祥事の拡大を防止することにあります。
企業にとっては、内部通報制度を適切に整備・運用することが、コンプライアンスの確保や企業価値の維持につながります。
3 公益通報者保護法との関係
内部告発と内部通報を考える上で重要なのが、公益通報者保護法です。
同法は、一定の法令違反行為について、労働者等が所定の要件を満たして通報した場合、通報を理由とする解雇の無効や不利益取扱いの禁止などを定めています。
ここで注意すべきことは、公益通報者保護法は、社内への内部通報だけでなく、行政機関や報道機関等への外部通報も保護対象としている点です。ただし、通報先によって保護要件は異なり、特に報道機関等への通報には、原則として、より厳格な要件が設けられています。
また、常時使用する労働者が300人を超える事業者には、内部公益通報対応体制の整備等が義務付けられています。300人以下の事業者については努力義務とされています。
4 企業に求められる対応
企業として重要なのは、従業員が安心して利用できる内部通報制度を構築することです。
具体的には、通報者の秘密保持、通報を理由とする不利益取扱いの防止、公正な調査体制の確保、調査結果に基づく是正措置などが求められます。
内部通報が適切に処理されず、通報者が不利益を受けたり、会社が問題を放置したりすれば、外部への告発につながる可能性が高まります。
なお、内部告発と内部通報は法律上明確に区別された用語ではなく、外部への通報を含めて「内部告発」と呼ぶ場合もあります。
企業にとって内部通報制度は、不正を発見するためだけの仕組みではなく、不祥事を未然に防ぎ、企業の信用を守るための重要な経営基盤です。 経営者には、通報を組織に対する批判と捉えるのではなく、企業の問題点を早期に発見し、改善する機会として積極的に活用する姿勢が求められます。

Last Updated on 11月 5, 2026 by kigyo-kumatalaw
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